乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー
テーマ4 牛の快適性を追求して健康と乳を最大にする(10回)
【6回目】自然な姿勢で飲水できる管理をする
快適なところで自然な姿勢で飲む
乳牛の体は6~7割が水で構成され、栄養を消化・吸収、そして代謝するために排泄物を出し、生命維持や生乳生産をしている。
水分要求量の2割以上を失うと、健康を維持できなくなり生命活動が危うくなる。同じ泌乳牛であっても、乳量が増えるほど、一日のアクセス回数及び一回当たりの飲水量も多い。生乳成分の8割が水分と考えると、飲水量イコール乳量ということが頷ける。
適度な気温の飲水行動は一日10~15回、一回当たり4~7L、一日100Lほど飲む。
ほ乳牛から育成牛、そして搾乳牛へと、体が大きく乳が多いほど大量の水を欲しがる(表)。
牛は大きな仕事を終えると水分を要求、搾乳後1時間以内に一日の3~5割の水を飲む(写真)。
フリーストールは両端より、中央通路の水槽がアクセスは多い。
また、糞尿が床面に蓄積していたり、水槽に付着しているところは敬遠する。人と同じで「楽をしたい、きれい」という気持ちが強く、距離のある両サイドより中央の水槽に群がる。
水槽周辺は混雑するので、通路幅を広くとり、滑らない、逃げ場がない袋小路を避けて快適なところへ設置する。
飲水時、顔の角度は水面に対して60度なので、奥行き60cmほど広くとり、高さ80cmほどを目安にする。一群に2つ以上の水槽を設置、複雑な構造ではなく、余計なバーや喉がひっかからないように自然な姿勢で飲めるようにする。
吐水量は飲水量とイコールだ
酪農家は朝と夕方に飼料給与と搾乳がほぼ同時刻に行われ、吐水量が極端に低下、特に水道管が細く水圧が十分でない酪農家は水不足の状態に陥る。しかも、搾乳後は洗浄で水を大量に使うため、あちこちでズーズーとすする音が聞こえる。
そのため、牛は水の供給量の少ない搾乳前後を避け、その数時間前に飲水量が増えていることが確認できた(図)。
一日の時間帯で水が出にくいことを事前に察知、飲みたい時ではなく飲める時を牛自身が判断していたのだ。
水槽の吐水量は1分2㍑であれば飲水量は78㍑、7㍑であれば84㍑、12㍑であれば87㍑だ。水道配管の内径を10cmと太くして、ループ状に改善することで吐水量が増える。
管の中に大量の水を溜めることで、いつでも供給可能で凍結も防ぐことができる(写真)。
飲みたい牛に対して、豊富に水を提供できるか、吐水量イコール飲水量だ。
現場で災害により停電で搾乳ができず、断水で水が飲めない事態が2日間陥った。
農業者からの話は強烈で、飲水できなくなると時間の経過で牛の動きが変化してきたと話す。
①採食と反芻が急激に落ちていく。
②搾乳のたびに乳量は激減していく。
③頻繁に寝たり起きたり挙動不振になる。
④キイーキイーと極端に高い音声で鳴く。
⑤前を通る人を手当たり次第にかじる。
このような順で、動きは次第に激しくなり、それを見ていた人も大きなストレスになったという。
清掃し易い水槽できれいな水を提供する
水が汚れてくれば牛の飲水行動は必要最小限になり、乾物摂取量が減少し乳量も低下する。現場でウオータカップが草で一杯、ミラーフオントの中が見えず汚れていることが散見される(写真)。
水槽を清潔に保つためには一定の法則がありそうだ。
① 牛の口は水深3~4cmなので浅い水面にして水量を少なくする。
② 排水口は直径5cm以上と大きくして汚れた水を急速に抜けるようにする。
③ 排水口は高さと傾斜を考慮し汚れが自然に流れるようにする。
④ 排水場所は通路などの畜舎内ではなく畜舎外へ流す。
⑤ 構造は複雑ではなく表面が簡単に洗えるシンプルな器にする。
ポイントは管理する人が自ら清掃したくなるような水槽構造だ。排水口が小さく、排水場所が通路であれば尿溜めがすぐに一杯になる(写真)。
新鮮な水を供給するために、清掃作業のし易い水槽が絶対条件だ。毎日、水槽及び周辺を掃除することは、新たな投資することなく極めて高い効果を生み出す(写真)。
水がきれいかどうかの判断は牛が水槽へ行って、速やかに飲水行動へ移すかどうかで決まる。異臭がしたり汚れていると、舌で水をはねたり飛ばしたり、時間をかけて不自然な動きになる。水は生産性を高めるので、自然な姿勢できれいで大量に飲水できる管理をすべきだ。
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