乳牛飼養管理・技術情報 技術アドバイザー

テーマ4 牛の快適性を追求して健康と乳を最大にする(10回)

【7回目】牛は暑さが苦手なので対策を徹底する

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暑熱は乳量・乳質に影響を及ぼす

北海道における暑熱の影響が大きかった1999年8月分娩牛の泌乳曲線を示している。乳量は分娩直後から大きく落ち込み(図)、

同様に、6月分娩牛は泌乳中期から後期にまで影響を及ぼしている(図)。

一方、年間における最高気温と体細胞の関係をみると、気温が上昇すると体細胞が増える傾向がみられる。しかも、10月の秋口になっても乳質の低下が続き、乳牛は暑さが苦手で対策を徹底する必要がある(図)。

体感温度は風速1mであれば気温がマイナス6度、4mであればマイナス12度、牛の体で感じる温度は低下する。畜舎をトンネルに見立て、長軸方向へ空気を移動・排出するトンネル換気が増えてきた。暑熱時は入気口と排気口の位置、開口面積を考慮して風速が2m/s 送風する。ファンは稼働台数と送風量で、最も発熱量の多い首から肩付近へ風が当るように配置する。

ファンの位置は体へ直接風が当たるように、設置場所や角度、台数に注意が必要だ。フリーストール牛舎で作業の邪魔をしないように、高過ぎるところへ設置するケースが見受けられる。このような位置では、牛の体に当たる風速が落ちるとともに風量も弱くなる。 

一方、細霧システムは水が蒸発する時に周りの熱を奪う(気化熱)ことを利用した装置である(写真)。

ノズルの先に高い圧力を掛けて細かい霧を発生させ、体に付着した水分は体表面の温度を奪い、直接皮膚温度を下げる。


直射日光を遮り体感温度を下げる

繋ぎ牛舎では繋留されている位置によって、差し込む光に数時間も曝され、大きなストレスを受ける。窓に日よけやひさし等を設置、遮光ネットなどで直射日光を遮る(写真)。

また、飼槽へ給与したサイレージは光によって、二次発酵・乾燥が促進され嗜好性・摂取量の低下を防ぐ(写真)。


牛舎の屋根は冬場の寒冷対策を考慮した建て方なので、容積に対して面積が広く、太陽光を受け止めやすい。
断熱材は外の熱を中に伝わるまで時間を要するだけで、建物自体は熱を保持するため外気温が下がっても遮られて外に逃げなくなる。温度は上昇しやすく、熱がこもりやすい構造で、放射熱を高める要因となっている。

夏場における屋根の表面は直射日光によって熱せられ、60℃近くに達する場合もある。屋根への散水は水で冷やすと同時に、蒸発するときに熱を奪う蒸発熱で表面温度を下げる効果を生む。

牛の毛は短く刈り、体表面からの熱放散を促すことで、ストレスが低減できる。経産牛は乳房、尾根周り、首すじからき甲、ルーメン周辺、初妊・初産牛は全部刈る。汗腺の出口が汚れる、アカが溜まると汗が出にくいので清潔に保つことだ。


良質粗飼料とミネラルを補給する

牛は体温が上昇すると乾物摂取量を減らし、熱発生量を抑えようとするのは身を守る生理作用が働く。特に、粗飼料は喰い込まず、唾液分泌が減って急激にルーメン内pHが低下していく。

刈り遅れで繊維含量の多い繊維は、消化による熱発生量が増加し採食量が低下する。良質な粗飼料の給与は第一胃の通過スピードが速く、熱発生量が少なくなり体温上昇を防ぐ。
給与は数回に分けて行い、夕方から夜間に重点的に給与することが効果的だ。重曹はTMR飼料に添加するだけでなく、欲しいときにチョイスできるようにすればルーメン内環境を整えられる(写真)。

気温が高くなると飲水量は増えて1回で4~6Lを一気に飲み、泌乳牛は一日100L以上に及ぶ貴重な栄養源だ。
一日の中でもルーメン内温度は給餌後に上昇、飲水時に低下するので水は暑熱対策に有効だ。夏場の水槽は残飼による腐敗臭で、臭覚の優れている牛にとって苦手で、数を増やし毎日掃除して清潔な水を提供すべきだ。

また、汗に最も多く含まれているのはカリウムで、次いでナトリウム、マグネシウムで要求量が増える。暑くなる3~4週間前から、無機物を1割増強した飼料プログラムが必要となる。

また、塩の必要量は「乳量*0.46%」で、乳量20kgが92g、乳量40kgが184g、暑い時は10~20%オンする。暑さが苦手なホルスタインは対策を徹底、快適性を追求して健康と乳を最大にすべきであろう。

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